ヴ(ォイ)ログ

音楽、機材、サカナクションの話

ヴェルディは楽しい:前編

 今回は普段の話題から大きく離れますが、Jリーグのクラブ・東京ヴェルディについて書いてみます。音楽と同じくらいサッカーが好きでして(ギターを始めるまでは10年サッカーをやっていましたし)、2007年から継続してヴェルディを追いかけています。友人と試合を見に行く約束を取りつけたので、踏まえると楽しい前提について説明するのにこのブログを使ってしまえ、という経緯です。

 

今回のお品書き

①現在のヴェルディはどういうクラブなのか?

②追いかけていて何が楽しいのか?←ココまで

③試合に絡んでいる範囲での選手紹介 

 

①現在のヴェルディはどういうクラブなのか?

 流石にもうヴェルディに「かつての強豪」というイメージを持っている人もあまりいないでしょうか…あの頃とは全く別のものだと思っていただいて大丈夫です。2008シーズンのJ2降格と日テレの赤字に伴う強化費の大幅削減、2009年の日テレのスポンサー完全撤退から”現在のヴェルディ”が始まると言っていいでしょう。資金的な後ろ盾を失ったチームにすぐさまJ1に返り咲けるような体力は無く、2010年にはチームの存続すら危ぶまれる経営危機に直面します(クラブハウスや練習場も手放す話が出たほどのようです)。

 シーズン途中でのJリーグ退会は不可能であることからJリーグが直接経営再建に乗り出し、当時の事務局長であった羽生英之氏が事務局長との兼任で社長に就任(その後翌年から現在まで社長を専任)、クラブ存続への道を探り続けてくれました。そしてスポーツショップを展開するゼビオグループがスポンサーに名乗りを挙げてくださったことで、どうにか存続の危機は脱することができました。羽生社長、そしてゼビオ様には本当に頭が上がりません。

 しかし経済的には本当にギリギリで、その後も育成上がりの有望株を他チームに売却してはJ1をお払い箱になったコスパに優れるベテランを獲得、という形でどうにかチームとしての力を落さずに済んでいるだけの状況が続きます。そのベテランもせいぜい2~3年の活躍しか望めません。2014年、このままでは疲弊していくだけだと判断した社長は「このクラブは下部組織出身の選手を軸にしたチームに生まれ変わります、だから今年はジャンプのためにしゃがみ込む年にさせてください」と異例の声明を出し、ユースから一挙に6人の選手をトップに昇格させます。ユース監督だった富樫剛一氏がシーズン途中からトップチームへ昇格、20位でシーズンを終えどうにかJ2残留を果たしました。

 翌シーズンからチームは少しずつ好転し始めます。成績こそ振るわないものの、若手がチームの主軸となったことで売却時の価格も上昇。スポンサーもつくようになり、少なくとも「チームの経営のために売らなくてもいい選手を売る」ことをする必要はなくなりました。2017年にはかつてラ・リーガエスパニョールやビジャレアルなどを率い一定の実績を残してきたミゲル・アンヘル・ロティーナ氏を招聘。欧州スタンダードの戦術をベースに着実に勝ち点を積み上げ、ロティーナのいた2年はどちらも昇格プレーオフに進出。2018年にはJ1チームとの入れ替え戦までコマを進めることに成功しますが、それでもJ1復帰を果たすことはできませんでした。

 ロティーナ退任後、アジアの代表サッカーで実績を持つ若手指導者、ギャリー・ホワイト氏を監督に迎えチームは欧州路線継続へと舵を切ります。しかし「ロティーナの2年間でチームはヨーロッパ式の戦いを身につけた」と判断していたフロントと実際の選手の戦術リテラシーの間には大きな乖離があり、ギャリーは本来したかったことにほとんど手をつけられないまま成績不振で解任の憂き目に遭ってしまいます。7月からは永井秀樹氏がユースからトップチーム監督へ昇格。そのまま今に至る…というのがヴェルディのJ2暮らしの大まかな流れです。

 現在のチームについてもう少し書いておきます。永井監督はマンチェスター・シティグアルディオラ監督及び彼の師匠である元神戸監督のファン・マヌエル・リージョ氏を師と仰ぐ、現代欧州サッカー志向の監督…ということになっています。一応は。実際に後方からのビルドアップについては丁寧に仕込まれていますし、常に立ち位置に気を配るサッカーはそのような要素も感じられますが、実際の攻撃の形は現在の川崎フロンターレにより近い印象です。シーズン途中から就任した昨年はなかなか監督の理想を体現できないままでしたが、今シーズン、特に再開後からは見違えるようなサッカーを繰り広げていると思っています。この辺りは「ふかばのnote」、「みどりのろうごく」に詳しいです。

ふかばのnote

みどりのろうごくblog

 

②追いかけていて何が楽しいのか?

 まず、スポーツクラブを応援するというのはそういうものですが、「だって好きになっちゃったんだもん」というのが1番の答えです。理由があって好きになるのではなく、好きになっちゃったから応援するのです。

 そんな中でも「だからこのクラブを応援し続けよう」という理由は当然あり、もっとも大きなものはやはり下部組織です。現在もっとも多くのJリーガーを輩出している組織であり、ここ数年は日本代表にも数多くのヴェルディ出身選手がいます(ここ数年招集経験を持つのは中島翔哉安西幸輝、三竿健人、畠中慎之輔など)。毎年とびっきりの魅力を持った選手が現れては頭角を顕し、壁にぶつかりながら成長して羽ばたいていくのは寂しくもとても素敵なことです。彼らの意識が「チームの中でいかにポジションを得るか」から「いかに自分がチームを勝たせるか」へと変貌したのがプレーに現れだした瞬間ほど熱い気持ちになることはなかなかありません。それは即ちその選手が遠くないうちに上のカテゴリーへと引き抜かれていくことでもあるので複雑ですが。

 もうひとつ、今のヴェルディに魅力を感じるのは株式会社アカツキと取り組んでいるリブランディングが大きいです。2019年よりアカツキがトップスポンサー、並びにヴェルディの株式を取得して経営にも参画しています。アカツキは「ロマンシングサガ」などが代表作のゲーム会社ですね。創立50年を機にエンブレムを変更し、「ヴェルディが顧客を奪い合う相手はFC東京ではなくサッカー以外のレジャーである」との発想から「総合クラブ化」を宣言。20近くのスポーツに参戦し、今後はスポーツ以外のカルチャーに対する取り組みも考えているそうです。ユニフォームのデザインや煽り映像、スタジアムのBGMに至るまで「ヴェルディを応援すること=カッコいい、イケてること」という図式を目指して取り組んでいる中それが評価され、先日のグッドデザイン賞受賞というご褒美もありました。ピッチ上の目標より先に「どういうクラブになるのか」が明確に打ち出された上で次の50年を見据えて歩む姿はとても健全で魅力的に映りますし、なんとか結果に繋がってほしいと願うばかりです。

www.brand.verdy.co.jp

 まとめるなら、「先に愛してしまったから」「愛していけるチームだったから」です。ピッチ上の現象は二の次よ。

 

少し長くなってしまったので③は後編に改めます。では。