機材の話: BOSS DD-500 ~パラメータ自動制御~
こんにちは。なかなか頻繁に書けませんね…前回のMini Glitch記事は思いのほか反応いただけてありがたかったです。
今回も機材の話を。定番となった感もあるBOSSのフラッグシップ機、DD-500についてです。
網羅的な情報については公式や楽器店さん/個人のブログをご覧いただくということで…後者はシンセを用いてStrymonのTime Lineと音質の比較をしたブログです、大変面白い記事なので是非とも。
1年ほど前に購入して以来使っているのですが、不満なく使えております(基本的に機能面にしか関心がないのもありますが)。今回はDD-500の隠れた特長であるアサイン機能と、パラメータの自動制御について書きたいと思います。(自動制御についてのみ知りたい方はこの後の設定方法や割り当て可能なパラメータのセクションは飛ばしてしまっても構いません。)
アサイン機能は他の有名多機能ディレイ(Time FactorやTime Lineなど)にもありますが、DD-500ほど豊富な機能を持つものは少ないのではないでしょうか?
DD-500でパラメータ変化をアサインする方法は大きく分けて2つです。
①「CONTROL」メニューから設定する
②「ASSIGN」メニューから設定する
「CONTROL」メニューから設定する
CONTROLメニューでは、本体のTAP/CTLスイッチ、(接続していれば)外部スイッチ及びエクスプレッションペダルにもたせる機能を選択します。それぞれのスイッチ/ペダルについてオンオフ、また設定をパッチ毎に記憶するか全パッチで共通のものにするかを選べます。例えばTAP/CTLスイッチには常にタップテンポを、エクスプレッションペダルにはパッチによってエフェクトレベルやフィードバック量を割り当てる、といった使い方ができますね。
このメニューで割り当てることができる機能は以下の通りです。
スイッチ類
・タップテンポ
・ホールド(オンになっている間フィードバックが固定)
・ワープ(フィードバックとレベルが上昇し、大人しい発振のような効果を得られる)
・ツイスト(複数のパラメータを変化させ、形容しがたい効果を得られる)
・モーメント(押している間はエフェクト音のみ出力)
・ROLL1/2、1/4、1/8(オンになっている間ディレイタイムが半分、1/4、8/1になる)
・フェード(エフェクト音がフェードイン/アウトする)
タップ、モーメント、フェード以外のものはラッチ・アンラッチの切り替えも可能です。
エクスプレッションペダル
・タイム
・フィードバック
・エフェクト音のトーン
・エフェクトレベル
・モジュレーションのデプス及びレイト
それぞれペダルを上げきった時、踏み込んだ時の値を設定可能です。
「ASSIGN」メニューから設定する
こちらが今回の記事の肝に近いですね。DD-500のアサインモードでは「PACTH」メニューで設定できるほぼすべてのパラメータ+αに任意の変化を加えることができます。
(是非上にリンクを貼ったBOSS公式サイトからダウンロードできるマニュアルを参照してください)
これはファームウェア1.0のマニュアルなので2020年4月現在の最新ファームウェア2.1で追加されているパラメータももちろん割り当てることができますし、これらに加えてエフェクトのオンオフ、TAP/CTLスイッチのLEDのオンオフ、フィードバックループのオンオフも制御することができます。なんとも恐ろしい…
ASSIGNメニューでの設定項目について書いていきます。
流れとしては①SRC(ソース)でアサイン先を設定し、②トリガーの挙動を設定し、③TRG(ターゲット)でアサイン先でコントロールするパラメータを選択し、④パラメータの変化の仕方を設定するといった感じです。設定画面の並びとは前後しますが、はじめはこの順番で設定していくと混乱しないと思います。
①SRC(ソース)でアサイン先を設定する
TAP/CTLスイッチ、エクスプレッションペダル、外部スイッチ1/2、INT PDL(後述)、WAVE PDL(後述)、INPUT(インプットレベルに応じてパラメータを変化させる)、MIDIのCCから設定できます。
②トリガーの挙動を設定する
スイッチ類はラッチ・アンラッチの切り替え、エクスプレッションペダルは操作範囲を設定できます。INT/WAVE PDLについては後述します。
③TRG(ターゲット)でアサイン先でコントロールするパラメータを選択する
どのパラメータを変化させるかを設定します。パッチのディレイモードに関係なく全てのモードのパラメータを設定できます(モードの変更もアサインできるのに伴うものだと思われます)
④パラメータの変化の仕方を設定する
③で選択したパラメータのmin/maxを設定できます。最小値/最大値と言うよりは「アサイン先から発される信号が最小/最大の時の値」と言う方が近いですね。例えばTAP/CTLスイッチをアンラッチに設定してエフェクトレベルを変化させる時minを0に、maxを100にすると押している間だけエフェクト音が出る、minを100、maxを0にすれば押している間だけエフェクト音が消える、というようにハイ→ローの変化も設定可能です。
以上がASSIGNメニューからパラメータ変化を設定する手順でした。恐ろしいことに、DD-500ではパッチ毎に8つものパラメータをアサインすることができてしまうんですよね…機材厨心がくすぐられますね…BOSSはこのなぜこの機能をもっと声高にアピールしないんでしょうか、売れすぎたら困るんでしょうか。
パラメータの自動制御について
いよいよこの記事の本丸です。先ほど後回しにしたINT/WAVE PDLがここで登場します。BOSSはこの機能を「仮想エクスプレッションペダル」と呼んでいますが、その名の通りここではパラメータの連続的な変化を設定することができます。
INT PDL(インターナルペダル)では、2つの値(minからmax)の間の一方向的な変化を設定します。TRIGGERで仮想エクスプレッションペダルが動き始めるきっかけを選択します。変化のカーブとスピードも設定可能です。トリガーのタイミングとして設定可能なのはパッチチェンジのタイミング、エクスプレッションペダルが最小値/中間値/最大値に達したタイミング、外部スイッチを押したタイミング、MIDI CCの信号です。
WAVE PDLは要するにLFOですね。ノコギリ/三角/サイン波から波形を選択し、任意のレイトでパラメータに周期的な変化を加えることができます。
このヤバさが伝わるでしょうか。この機能によってDD-500は変態グリッチペダル、そしてもはやディレイを超えたトンデモマルチと化すのです…いくつか僕が実践している使い方を紹介しますね。
・グリッチエフェクト
TAP/CTLにドライのカット、エフェクト音の出力、フィードバックの最大化をアサインすることでraptioなどに代表されるグリッチエフェクトを簡易的にですが作ることができます。様々なモードに適用する、またイコライザーの設定によってエフェクト音を作り込むこともでき、DD-500ならではのグリッチサウンドを作ることもできるでしょう。
・キルスイッチとしての運用
あらかじめエフェクト音をカットしておき、スイッチにドライのカットをアサインすることでキルスイッチとして使っています。ジョニー・グリーンウッドになりたかったので…
・動きのあるモジュレーション
SFXモードにおいてタイムを最小にすることで普通にフェイザー、トレモロ、フィルター、ビットクラッシャーとして使えてしまうテクの発展型です。トレモロのレイトを動かしてレディオヘッドのBonesを再現したり、オートフィルターの波形やレイトを変化させて複雑な動きをさせるなどの使い方をしています。まだまだ無限の可能性を秘めた使い方です。
・ランダムグリッチもどき
パラメータのランダムな変化は設定できないのですが、ディレイタイムのノート、テープエコーモードの再生ヘッドの組み合わせなどを変化させることで段階的なピッチ変化が実現します。同じパラメータに複数のWAVE PDLを適用することでランダムに近く感じられるような変化を作ることができます。ピッチディレイなどで作っても面白いです。
これらは氷山の一角であり、DD-500はまだまだ大いなる可能性を秘めています。「ディレイタイムをインプットレベルに連動させて発振の音程を手元でコントロールする」などの楽しい運用を日々編み出しているひょう'さん(@hyhyoyhyh )のツイッターアカウントは必見です。また、ツイッターにて「DD-500怪音部」で検索しても参考になると思います。DD-500を使っているみなさん、DD-500を買うつもりのみなさん、是非DD-500怪音部で僕と握手しましょう!
発売から5年近く経つにも関わらず、DD-500を実際に使い込んでいる人のレビュー記事があまり見当たらなかったので自分なりに書いてみました。どなたかのお役に立てれば幸いです。それではまた。